インヴィンシブル投資法人が配当を98%の減配としたことがニュースに取り上げられていますが、このような記録的な減配が起こってしまったのはREIT自体の構造的な問題なのか、それとも個別銘柄の問題なのか見ていきます。
固定賃料もももらえなかった今回のケース
まずホテル系のREITの賃料は主に固定賃料と変動賃料の2つがあります。固定賃料はほぼ必ず入ってくるものなのでこれで最低限の収益を確保しつつ、ホテルの運営がうまくいったときには追加の変動賃料が入ってくるのでアップサイドも見込めるというのがホテル系REITの特徴です。
しかし、今回については変動賃料はおろか、固定賃料も諦める事態になっております。詳しくは後程。
主な関係者
インヴィンシブル投資法人
投資主から資金を集め、それでホテルを保有している
株式会社マイステイズ・ホテル・マネジメント(以下「MHM」)
インヴィンシブル投資法人の主要テナント。どのくらい主要かというと、インヴィンシブル投資法人が所有する国内ホテル83物件のうち、73物件に入るくらい主要。
フォートレス・インベストメント・グループ(以下FIG)
インヴィンシブル投資法人のスポンサーであり、MHMの親会社的なところ。正確にはFIG関連のファンドがMHMに出資している。
事の経緯
平時はインヴィンシブル投資法人が資金を投資主や金融機関から集めてホテルを取得、そのホテルをMHMに運営してもらい賃料を得るというような流れになっていました。
しかし、今回のコロナ禍でホテル需要が蒸発し、GOP(企業の営業損益に相当)がマイナスに…MHMの経営が立ち行かない事態となりました。
MHMの立て直しにFIG関連ファンドが出した追加出資は13億円。それに対してインヴィンシブル投資法人が今回負担する額が3月から6月末までの固定賃料免除で35億円、MHMが支払っていた物件管理・運営費を肩代わりするので15億円となっております。この負担の割合が妥当なのかが今回のポイントの1つになります。
そもそもMHMは営業損失に耐えられない
また、MHM自体はもともと財務的に弱い性質を持っていたようです。というのも、インヴィンシブル投資法人との取り決めでは「固定賃料と変動賃料を組み合わせた賃料体系とするとともに、本投資法人がGOPのアップサイドのほとんど全てを享受し、MHMグ ループは本社経費等を勘案して設定した必要最低限の管理業務受託手数料に相当する金額のみを受領する仕組みになっております。」とされています。つまり営業損失が出た場合、MHMでは対応する余力がなく、「十分な資産を保有しているわけでもないため、借入その他の金融支援を受けることもできない状況にあります。」
これはある意味では投資主の分配金を最大化する営業努力とも言えるかもしれません。しかしその結果として危機時の対応力はそがれてしまったことは残念です。
REITの仕組み上、固定賃料も「猶予」ではなく「免除」
また、本来は最低限の収益を保証するはずの固定賃料までも猶予ではなく免除にしなければならない理由として、REITの仕組みがあります。REITはその期にあげた利益の9割を配当とする代わりに法人税を免除されています。もし固定賃料を利益として計上して、支払い猶予をすると資金が入ってこないにもかかわらず配当はしなければならない事態になります。そうなると投資法人からかなりの額が流出するため、払われない賃料は猶予ではなく免除しなければならないことになったようです。
通常は高配当、でも危機対応は…
平時から分配金を最大化していたツケが回ってきた、テナントが1つに集中していた、誰にも想定できないくらいの収益の悪化だったなど今回特有の、また当該REIT特有の理由もあるかもしれません。ただ、利益を内部留保しないことでリスクへの耐性が落ちてしまうこともあるようです。
いずれにせよ、そのようなリスクがあることをよく理解したうえで投資判断をしていきたいところです。

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