投資をしていると何となく含み益があったり配当があったりすると儲かった気分になりますよね。しかし、厳密なトータルリターンを計算すると思わぬ側面が見えてくることもあります。まずは投資の大家ウォーレン・バフェットの考えた「投資家悲惨指数」をもとに真のリターンが何かを見てみましょう。
バフェットの名付けた「投資家悲惨指数」とは
バフェットは1979年の株主への手紙の中で「投資家悲惨指数」という独自の考え方を紹介しています。
それによるとある投資が本当に投資家に豊かさをもたらしているかどうかはそのリターンが証券を現金化するために必要な経費(主に配当や値上がり益に対する課税率)とインフレ率を超えていなければならないという考え方です。
例えば1万円を1年間運用して2%の配当をもらうと200円の儲け、それに日本だと約20%の税金がかかるので、実際の手元に残るのは200-40=160円、元本と合わせて1万160円になります。
その一年間に年率2%投資した時の1万円は1年後に1万200円を超えていないと購買力が上がっていないことになります。
実際に計算していくと、インフレ率2%、税率20%の場合、年率2.5%以上のリターンが無いと購買力は上がらないことになります。
ちなみにバフェットがこの考えを紹介した1979年のアメリカでは、原油の消費者物価上昇率が25.1%、食品でも10.2%ですから、実際に求められるリターンは相当なものだったと考えられます。
バフェットはこれを分かりやすく説明するためにハンバーガーを買うことを例に説明します。
If you (a) forego ten hamburgers to purchase an investment; (b) receive dividends which, after tax, buy two hamburgers; and (c) receive, upon sale of your holdings, after-tax proceeds that will buy eight hamburgers, then (d) you have had no real income from your investment, no matter how much it appreciated in dollars.
ウォーレン・バフェット、株主への手紙1980
もしあなたが(a)まずある投資のためにハンバーガー10個分の価格を支払い、(b)税引き後で2個のハンバーガーを買えるだけの配当を受け取り、(c)手持ちの投資を売却して税引き後ハンバーガー8個分の金額を受け取るとしたら、(d)たとえドル建てでどれほど価値が上がったとしても、あなたはその投資から真の利益を全く受け取っていないことになります。
そしてその結果、こんなことが起きます。
Inflation rates not far from those recently experienced can turn the level of positive returns achieved by a majority of corporations into negative returns for all owners, including those not required to pay explicit taxes.
ウォーレン・バフェット、株主への手紙1980
近年経験しているインフレ率くらいだと過半数の企業が得たプラスのリターンをマイナスのリターンに変えてしまうことができます。それは明示的な税を払わない経営者含め、すべての経営者に降りかかります。
この問題を指摘してバフェットは以下のように締めくくります。
We have no corporate solution to this problem; high inflation rates will not help us earn higher rates of return on equity.
ウォーレン・バフェット、株主への手紙1979
この問題に我々は会社としての解決策を持っていません。なぜなら高インフレが株式に対するリターンを増やすことにはならないからです。
…But you should understand that external conditions affecting the stability of currency may very well be the most important factor in determining whether there are any real rewards from your investment in Berkshire Hathaway.
ウォーレン・バフェット、株主への手紙1979
…しかし、理解していただきたいのは貨幣価値の安定に影響する外的な状況こそが、バークシャー・ハサウェイへの投資が真のリターンをもたらすかどうかを決定する最も重要な要因になるだろうということです。
黙って「会社の企業価値は上がりました!」とだけ言うことも可能な中、自分に不利なことでも株主に有益なら率直に話す姿勢はバフェット流石といったところです。
バフェットは1981年の株主の手紙でも引き続きインフレに言及しており、インフレを企業に寄生するサナダムシに例えています。せっかくの得たものを寄生して奪っていく点では両社は似ているのかもしれませんが…CEOと株主の対話という、オフィシャルな場で想定する表現ではないですね。笑
現代の「株主悲惨指数」への対策
1979年のアメリカほど悲惨ではないものの、今の日本も配当課税や株式譲渡益税の税率20%とインフレ率によるリターンの毀損は避けられない状況です。それに対する対策は以下のようなものがあります。
税金への対策にはNISAを使う
配当や値上がり益への課税はNISA(ニーサ)を使うことで避けられます。



また、確定申告することで最終的に支払う税金を減らすことができる人もいます(その人の収入による)。
インフレ対策は結局投資しかない
インフレへの対策は結局のところインフレに強い資産への投資ということになります。現金での預金はインフレ負けしてしまうので、バフェットも勧めていません。

インフレ率までは行きませんが、トータルリターンを調べてみるにはこちらがおすすめです。


コメント